高橋祥子さん 生命科学による不安の解消

生命科学的思考で不安と向き合う

 NHKの「視点・論点」でバイオベンチャー企業ジーンクエスト代表の高橋祥子さん(1986-)が話していました。遺伝子解析によって親子関係や出生前診断をするビジネスです。著書「生命科学的思考」(NEWS PICKS)など。今回の「視点・論点」の表題が「不安についての新しい視点」でしたので、視聴しました。

 高橋さんの論点は「すべての生物が個体として生き残り、種として繁栄するために行動する。それゆえ不安は、生命を脅かすものから逃避する正しい感情である」というものです。そういう生命としての客観的原則を知り、自分はどうしたいか、主観的な意思を生かす・・・これが生命科学的思考である。不安という感情は遺伝子が正しく機能していることの証拠である。危機に備え、危機を察知していく、そのための守りの機能の一つである。私(高橋さん)も起業する時不安を感じましたが、それを遺伝子の機能によって不安を感じているだけだと考えることができた。

 しかし、不安には対策できる不安と、対策できない不安に分けられる。対策できる不安については、事前に準備して対処できる。たとえばコロナ禍ではマスクや手洗いなど、自分でできる対策である。一方、漠然とした不安(対策できない不安)は、生命の性質によるものであり、行動では対処できない。それには蓋をして考えないでおく・・・。

しかし、すべての感情を客観視する必要はない。うれしいことや楽しいことは、遺伝子が機能していることを忘れて心の底から楽しもう。辛事(つらいこと)は理(論的に解消し)、幸事(たのしさ)(感)情でもって処す(楽しむ)・・・と言っています。

筆者のコメント:高橋さんは「生命科学的に見た〇〇」を独自の見かたとしたいようです。その一つが「ビジネス」であり、今度の「不安に向き合う思考」もその一つです。たしかに新しい視点ですね。しかし、視聴して「?」と思いました。まず、「不安は生命を脅かすものから逃避する(人間の)遺伝情報に基ずく正しい感情である」は、たしかに人間を含む動物に当てはまります。筆者は、分子生物学よりもう少しグローバルな視野で見る生命科学の研究をし、神経科学、ことに不安や、それが病的になったうつ病についての研究をし、講義やカウンセラーもしていました。その経験から言いますとと、人間の不安は本能的なものよりも、高橋さんの言う対策できない不安の方が厄介で、そこが問題なのです。高橋さんの言うような「それには蓋をして考えないようにする」では、なんの解決にもなりません。つまり、高橋さんの論説は、ほとんど意味をなさないのです。

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