人間原理

人間原理

 人間が知ることのできるこの宇宙(ユニバース)以外にもたくさんの宇宙があると考えている科学者は少なくありません(マルチバース説)。「そこには人間と同じような知的生命体も存在しうる」と考えている人もいるでしょう。しかし、最近の宇宙物理学によれば、個々の宇宙の構造はそれぞれまったく違うと考えられているのです。というより、この私たちのいるユニバースこそ、それらの中で奇跡的存在なのです。アインシュタインの一般相対性原理で示された「宇宙定数(その宇宙を成り立たせている基本的な単位)」の値が、私たちのユニバースについては奇跡的に人間が存在するのに適しているのです。さらに物質の基本単位である素粒子の数や種類も、他の宇宙では違うかもしれないのです。以前お話したように、このユニバースで、現在知られている素粒子は17種(18種)あることが知られています。それぞれの性質や意義は、今後の研究によってますます明らかにされて行くでしょう。しかし、なぜ17個なのか、なぜそれぞれがそれぞれの性質を持っているのかは、永遠にわからないのです。生命についても同様です。遺伝子DNA塩基の種類が4つで、たんぱく質を構成するアミノ酸が20種類であることはわかっていますが、なぜそれぞれ4種と20種となっているのかについても「神が決めた」としか言いようがないのです。筆者が、筆者のグループが突き止めたあるたんぱく質遺伝子の構造をながめているとき、突然「生命は神が造れらえた」と感じたことは、お話しました。

 一方、近年、この銀河系にも地球型惑星の発見が相次いでいます。あるいはそこには人間のような知的生命体もいるかもしれないとの期待もあります。この太陽系にも土星の衛星エンケラドスやタイタンにも生命が存在する可能性が言われています。しかし、間違えてはいけません。地球外生命の存在と、人間のような知的生命体の存在とはまったく別の問題なのです。以前お話したように、地球上で知的生命が生まれたのは奇跡としか考えられないのです。人間のような高等生物が生まれたのは、水が液体の状態で存在しうる、地球が太陽からの距離の100±1~2%のごく限られた範囲にあること、月という衛星がちょうど良い位置にあったことなど、偶然に偶然が重なったからです。地球が火星ほどの大きさだったら、大気は宇宙へ拡散してしまいます。

 「神は自分の業を客観的に知るために人間をお造りになった」という考えがあります。
そしてまさにこのユニバースが造られてから138億年経った今、人間は生命の秘密や、宇宙の構造をつぎつぎに明らかにしているのです。138億年という気の遠くなりそうな時間の、わずかここ100年のことです。驚嘆すべきことではありませんか。

 このユニバース宇宙の基本方程式は4つあると考えられています。そのうち3つまではすでに明らかにされました。「あれが最後の一つだ」という山の頂に立とうとしています。しかし、あと一息というところまでまで来てみたら、その先、はるかかなたまで真理の平原は広がっていたのです。

 筆者が以前このブログでお話したように、人間は一兆分の一の一兆分の一のそのまた一兆分の一というような信じられないような偶然が重なってできたのです。「人間を生み出すために地球はでき、この宇宙はすべてその背景である」これを人間原理と言います。筆者が「宇宙も人間も神が造られた」と言うのはたしかに論理の飛躍です。「わからないところで神を持ち出すのはずるい」と言う人もいるでしょう。しかし筆者には「神がお造りになった」としか考えられないのです。
 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です