沖田☓華さん
このブログシリーズは、仏教の究極の目的である、「苦しみからの解放」について、さまざまな方向から筆者が学んだものをご紹介しています。今回は、私たちと同世代を生きている沖田✕華さんの感動的な体験についてお話します。
沖田☓(バッ)華さん(1979-)漫画家(「起きたバッカリ」が筆名の由来)。「ニトロちゃん」「蜃気楼家族」など多数。小中学生のときに学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、アスペルガー症候群と診断された。いわゆる発達障害ですね。NHKテレビ「バリバラハートネットTV」で紹介された沖田さんの壮絶な半生については、言葉もないくらいです。小・中学生時代は、先生に「明日〇〇を持って来なさい」と言われたことをすぐに忘れ、「お前のためにどんだけ迷惑かけられていると思うんだ!」と怒鳴られたこと。鍋に火をかけたまま、15時間も台所に出入りしてたのに火を消すのを忘れたのに気付かず・・・。努力して看護師国家試験に合格したが、言われたことがやれず、最初の日から医師に「サッサと帰れ」と。看護師の上司から「朝『やっといて』と言ったのに。どうしてそんなことが出来ないの」と叱れたとか。✕華さん自身が「それは私が知りたい」「これから一生叱られて生きて行くのか」・・・。さらに、「もーまじでジャマ。死んでしまえ」とまで言われ、ついに自死を企てた・・・。でも、気が付くと生きていた。縄が切れたのだ。
その後、風俗の世界に入った。そこでお金が貯まって行くのを見て初めて生きがいを感じた。その風俗店で客として出会った漫画家の言葉によって人生が大転換した。話の流れで自分のこれまでのことを話すと、「君の人生そのものがマンガの種じゃん」と言われた。今のマンガ家としての活躍はご承知の通りです。
ファンには「苦しさを笑い飛ばす人」として受け止められています。沖田さんは「かわいそうと言って欲しくない。それは発達障害の受け止め方ではない」と言います。自分や周りが発達障害と気付くまでの期間がどれだけ苦しく悲しかったか、涙が出ますね。
沖田さんの体験から学ぶこと
沖田さんの体験から学ぶことはたくさんありますね。まず、初めて自分の価値に気付いたのが、風俗嬢をしてた時、貯金がだんだん貯まって行った時だと言います。人は「存在を認められた」と感じることがどれほど大切かわかります。先生や、医師、看護師の上司を頭から「ひどい」と決めつけるわけにもいかないところに、この問題のむつかしさがありますね。ただ、沖田さんに自死を決意させてしまったのが、上司による沖田さんの完全否定だったことはあまりにも重大です。
沖田さんが発達障害者の集まりに招かれて、「会話をスムーズに進めるにはどうしたらいいですか」と聞かれ、「なるほど、なるほどとか、そうですねと言うことです」と答えたのはとても印象的でした。沖田さんの言葉は、厳しい長い間の実体験に基づくものでしょうから、改めて我が身を振り返って自問します。