安楽死?嘱託殺人?(3)

 この問題についてすでに2回ブログでお話しました。その続きです。前々回お話した、

小島ミーナさん(スイスで安楽死をした)についてのNHKの報道に対して障害者団体から激しい非難を受けて、今回は大分トーンが変わりました。

NHKスペシャル「患者が命を終えたいと言った時」(2020/12/26)(註1)

 この番組では2人の患者について紹介されていました。一人は末期ガンのAさん52歳。Aさんには小学1年生の娘に、「病気と闘う姿を見せながら死ぬか」、あるいは「鎮静剤によって安らかに死ぬ姿を見せるか」.の選択肢がありました。鎮静剤は痛みをやわらげることはできますが、死に至る可能性も大きい薬です。つまり安楽死薬ですね。NHK取材班は継続してAさんに密着し、新城拓也医師とのやり取りを記録しました。Aさんは後者を希望し、新城医師に「明日の午後お願いします」というところまで来ました。驚くべきことに、新城医師には前回お話した「京都嘱託殺人事件」の林優里さんからも「死なせてほしい」とのメールが来ていたのです。「返事はしなかった」と。新城医師は、当日鎮静剤を用意してAさんを訪れましたが、もう一度「薬剤の投与を延ばしますか」「耐えられますね」と繰り返し、「私の言うことがわかりますね」と確認しました。結局、投与を止めましたが、固唾を飲んでAさんの反応を見ていた筆者には、Aさんが新城医師の提案を受け入れたとは決して思えませんでした。Aさんは翌日亡くなりました。新城医師は患者と共に涙する医師としての良心に溢れた誠実な人とお見受けしましたが、このやり取りには疑問が残りました。

 もう一人の患者はBさん。病気はALS(筋萎縮性側索硬化症)。だんだんすべての筋肉が弱って行き、最後には自分では呼吸もできなくなる。林優里さんと同じです。5年前に罹り、当時は呼吸補助装置を付けていましたが、人工呼吸器を着けるかどうかの段階に来ていました。長男の結婚式には呼吸補助装置を付け、車椅子で挨拶しました。医師は荻野美恵子さん(国際医療福祉大学市川病院)。荻野医師はBさんと同じような神経難病の患者を40人も担当してきた、経験豊かな人です。

 Bさんは一貫して「人工呼吸器を着ければ話すこともできない。病状が進めば自分で死ぬこともできない。家族にこれ以上負担を掛けたくない」の態度を取り続けていました。「自分で死ぬこともできないとか、話すこともできない」は重要な点で、後でも述べますが、人間としての尊厳にかかわることです。.Bさんの奥さんは「家族全員が泣いて頼めば人工呼吸器を付けるでしょう。しかしそれは本人の意思にに反することです・・・」と言っていました。

 筆者がとても気になったのは荻野医師の対応です。荻野医師は「人工呼吸器を着けるかつけないかは本人の選択であり、無理強いはしない」と言い続けてました。しかし、腹の中では「それを着けてでも生かしたい」と考えているように筆者には思えました。理由は以下の通りです。

 荻野医師は「本人は本当に自分の人生が終わってもいいと納得しているのかがわからない」と言い、「本当にそれでいいのですか」と繰り返し聞いたのです。Bさんが何度も「ノー」と言ってるにもかかわらず。しかし、Bさんが迷うのは当然でしょう。その上でベターな決断をしているはずですから。筆者には萩野さんはBさんを自分の考えの方へ誘導しているとしか思えませんでした。

 その後、突然Bさんの容態が悪化し、人工呼吸器を付けなければ死ぬ危険が生じました。萩野医師は「家族の負担が増すと言っていらっしゃいますが、病院やへルパーの支援など、別の選択もあるのではないですか」「苦しみを共有するのが家族ではないですか」と。萩野医師の決めぜりふは「奥さんは、『主人が着けると言ったらその医師に従います』と言っています」でした。「Bさんは泣き顔になって感極まった様子でした。『先生が家族に心から寄り添っていただいていることがわかりました。先生が背中を押して下さいました』・・・。

 じつは萩野さんには16年前の苦い経験がありました。80代の母親が40代の息子に「人工呼吸器を外してくれ」と泣いて頼まれたため、それを外し、自死幇助罪に問うれた「事件」です。そのとき母親から萩野医師ににも相談があったのです。萩野医師は「だめです」と。萩野「私にも3人のこどもがあります。でも親が子を手にかけることなど到底できない」・・・。

 筆者が萩野さんの人間性に疑問を感じるのはこういうところです。いいですか、その母親の置かれた状況は萩野さんとはまったく違うのです。萩野さんのように「わが子を手に掛けた」などと言ったらお母さんは生きていられないでしょう。

 Bさんは人工呼吸器を着けました。しかし、じつは問題は今からなのです。萩野医師にも家族にもそれがよくわかっていないのではないかと思います。ヨーロッパには人工呼吸器も、胃ろう(胃に穴を開け栄養を投与)も、経静脈栄養もありません。次回はそれについてお話します。

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