筆者もこの問題を避けて通ることはできません。この問題については多くの「識者」がさまざまな視点から解説をしていますが、筆者の意見はシンプルです。
結論から言いますと、山上容疑者は実に適切な問題解決法を実行したのではないかと思います(註1,2)。まず、統一教会(現世界平和統一家庭連合)のひどさはよく知られている事実ですから、ここでは省略します。問題の一つは、なぜ自民党と深く関わってきたかですね(註3)。それについても多くの人が指摘するように、統一教会側としては「自民党にお墨付きをもらうこと、つまりはわが国民にも認知してもらうこと」でしょう。一方、自民党側のメリットは「無料で選挙に協力してもらい、選挙の際には票になること」、これも「識者」の言う通りでしょう。日本の信者の数は5-6万人と言われますが、少なくとも地方選挙ではあなどれない得票数になると思います。それにしても自民党がなぜこれほど問題の多い統一教会を利用したのか。「知らなかった」で済むはずがありません。
統一教会についての最も深刻な問題は「信者の退会を説得することが極めて困難」でしょう。あの山上容疑者の母親も、事件後まず協会に謝罪したとか。これに対し、現在、これほどまでにマスコミが騒ぎ、国民の関心を引いていることは、個人または集団で退会を説得するより、はるかに有効な手段です。現信者やその二世に大きな衝撃を与え、自分を取り戻すきっかけになっていることはまちがいないでしょう。これまでの「脱カルト協会」の真摯な努力は中々実を結ばず、紀藤さんなど弁護士の地道な努力も、成果が上がるまでに何年もかかっているのです。
もし山上容疑者のターゲットが統一教会幹部だったら、これほどまでに国民の関心を引かなかったでしょう。なんといっても元首相の安倍さんだったことが衝撃的だったのですね。以上のことを勘案すれば、山上容疑者が安倍さんをターゲットにしたのはきわめて有効な、信者に自覚を促す解決手段だったと思うのです。多くの国民が山上容疑者に同情し、多額の義援金が寄せられている事実が何よりの証拠ですね。
註1 人を殺して問題解決を図ることが良いはずはありません。しかし、現にウクライナ政府は多くの兵や市民を犠牲にして問題解決を図っているのです。別に筆者が取り立てて言うことではありませんが。ウクライナ問題、中国がウイグル自治区でやっている蛮行で悩んでいる人の中に、「プーチンや習近平を暗殺するしかない」と半ば本気で考えている人は少なくないと思います。
註2 この種の問題は統一教会ばかりでなく、他の新宗教や新々宗教の問題でもあることは、多くの人が言うとおりでしょう。既存の大宗教でも「熱心な信者」とは、しばしば「洗脳」の裏と表なのですから。以前の日本の国政選挙のさい、筆者の郷里の、創価学々員と思われた人たちが数人、筆者宅を訪れ、協力を要請されたことがあります。見覚えのある顔もありましたが、話したこともない人たちでした。彼らが筆者の住所をどうして知ったのか、空恐ろしさを感じました
註3 米・共和党についても同様のようです