臨床宗教師3)

 筆者のもとへときどき「臨床宗教師になりたい」と言ってくる人がいます。結論からお話します。臨床宗教師として生活できている人はごくわずかですぜひ慎重にお考え下さい。現在、僧侶がいる病院として、ビハーラ病棟のある長岡西病院、在宅型ホスピス「メディカルシェアハウス・アミターバ」(岐阜県大垣市笠木町の沼口医院の敷地内)などがあります。これらの施設では給料がもらえます。しかし他の大部分の、現在の臨床宗教師としての活動の実態は大部分がボランテイアなのです。生活として成り立たないからで、当然でしょう。筆者の知っているケースでは、僧侶として自分の寺を持ち、それに加えて臨床宗教師としての活動をしています。つまり、ちゃんとした生活の基盤が別にあるのです。

 臨床宗教師養成講座は、現在、大谷大学、龍谷大学、上智大学、種智院大学、武蔵野大学、東北大学などにあります。このように養成講座の多くは仏教系です。しかしそれらの講座の内容を垣間見て、良いところだけを謳い文句にして、生活もできない人たちを次々に養成しているのではないか、と筆者は疑問を感じています(註1)。

 仏教系の臨床宗教師問題には、「死を恐れている患者さんもいる病院にお坊さんが出入りするのはいやだ」という声があります。よくわかりますね。さらに、筆者がこのブログでくり返してお話ししているように、現代の仏教家のほとんどは仏教そのものがわかっていないと思います。わかっていない人が死という重要な問題に口を出せるはずがありませんね。

 じつは、キリスト教には古くからチャプレンという、同じような制度があります。さらにグリーフケアという組織もあります。グリーフケアとは、たとえば末期ガンで不安に襲われている人や、大切な人を亡くし、悲嘆(グリーフ)に暮れている遺族の心のケアをするための組織です。上智大学にはそのための研究所もあります。ご承知のように上智大学はキリスト教系の大学ですから、グリーフケアの内容はキリスト教の教えが中心になっています。しかし、患者に応じて宗教色を薄くする場合もあるようです。つまりキリスト教の教えとは離れて患者や遺族の悲嘆そのものに向き合っているところに、臨床宗教師より幅の広さがあると思います。一方、「千の花」のような民間団体もあります。「千の花」では、大山理恵さんがスピリチュアル系のカウンセリングをしていらっしゃいます(註2)。

註1 浄土真宗本願寺派が、運営していた独立型緩和ケア病棟「あそかビハーラ病院」(京都府城陽市)からの撤退を表明しました。 問題が大きかったからでしょう。

註2 他の組織としては「遺族外来・家族ケア外来・グリーフケア外来・遺族会のある病院リスト」をネットでご覧ください。

One thought on “臨床宗教師3)”

  1. 「臨床宗教師」なる職業・肩書を初めて知りました。
    調べてみたら10年ほど前にできたんですね。
    反対に言うと僧侶は臨床宗教師になることが割と容易では?とも思います。

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