ロシアは敗れ、国は崩壊する(2)

 NHKテレビ「ロシア衝突の源流」で、オクスフォード大学のアンドレ―・ゾーリン教授は、

・・・・世界を平和に保つために重要なことは、指導者たちが現代の問題に対する答えを歴史に求めないことです。歴史的に自分たちの土地かどうかを考えてみても不満しか生まれません。あなたの国が他の国に迫害されたかどうかを考えても憎しみしか生まみません。歴史が国際政治の議論の中心になってはいけないのです。国の指導者が歴史を政治に利用し始めた時、戦争の前触れになるのです。専門家の仕事は戦争の道具にしないことです。歴史は学問として冷静にとらえ、憎しみや恐怖を生まないようにしなければならないのです・・・・

と言っています。まことに傾聴に値すべき言葉ですね。最近、わが国でいろいろな問題が起こるとすぐに「専門家」のコメントが出ますが、彼らの言うことと次元が違います。

 一方、ケンブリッジ大学のリチャード・ネッド・レボー教授は戦争学の教授です。両親がナチスによって殺され、孤児になったのを、幸いにもアメリカ人夫婦の養子になったという歴史がある人です。「戦争はなぜ起こるのか。もう二度と起こさないためにはどうしたらいいのか」それが戦争学を50年以上にわたって研究してきた強い動機になったと言うのです。

 レボー教授は言います。

・・・・・20世紀になって大国が負けるようになったのです(註1)。戦争は相手に犠牲を強いるだけでなく、自分たちもそれに耐えなければなりません。そのとき国民の心の支えになるのがナショナリズムです。ウクライナ人は今、こうしている間にもロシアとよく戦っています。戦って死ぬ覚悟があるからです。ロシア兵にはそんなものはありません。戦争はもう二度と起こしてなならないのです。近代兵器の発達により犠牲があまりにも大きくなってしまったからです。しかし、周囲の反対を押し切って戦争を進めても、世界から孤立するばかりです。プーチンは、自らをピョートル大帝や、エカテリーナ女王、そしてスターリンのようにロシア帝国を築き上げる使命を持っていると思っています。しかし現実はその逆で、プーチンは今ロシア国家を破壊しているさ中なのです・・・・・。

 私はこのレボー教授の言葉を何度も繰り返して視聴しています。戦争学の専門家ですからさすがに説得力があります。そしてウクライナの人々に「もう少し頑張ってください。夜明けは近いのです」と言いたいのです。

註1アメリカがベトナムに負け、ソ連はアフガニスタン侵攻から撤退しました。

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