イスラム教徒に対する誤解(1)

 NHK「こころの時代」で、イスラム教徒(ムスリム)について筆者がこれまで抱いていた大きな誤解に気付かされました。

 大部分の人はイスラム教徒と言えば、過激なテロ思想の持ち主というイメージを持っていると思います。なんといっても2011年のニューヨーク世界貿易センタービルへの乗っ取り旅客機の突入が思い出されますね。乗客と貿易センタービルに居た日本人を含めた3000人の犠牲者が出ました。貿易センタービルは、以前筆者も見たことがある瀟洒なツシンタワーでしたから、次々に旅客機が突っ込み、ついにはビル自体が崩壊して行く姿をリアルタイムで見て衝撃的でした。その他、過激派テロ組織IS(イスラム国)の行動、アフガニスタンのタリバン政権による女性差別、少年をジハード(聖戦)と言ってだまし、自爆テロを起こさせることなど、例を挙げればいくらもありますね。これらの状況を見れば、世界の人々がイスラム教徒についてきわめてネガテイブな印象を持っていても無理はないでしょう。

 しかし、前述のNHKテレビ番組で、ムスリム(イスラム教徒)であり、これまで東京のマスジド(モスク)大塚の事務局長をされてきたクレイシ・ハールーンさん(59)のお話を聞いて驚きました。まず、上記の聖戦(ジハード)の正しい意味は「奮闘・努力」だったのです。しかも後述するように「隣人のためにする努力」だと、聖典クルアーン(コーラン)にも銘記してあります。

 クレイシさんたちの福祉活動は毎月一回、近所の公園で日本人ホームレスを含む沢山の人たちに食事を提供しています。トルコ料理店から60キロの鶏肉を寄附して頂いたり、別の商店から玉ねぎを一箱提供されたりして、活動を続けているのです。クレイシさんは日本に来た当初、「パキスタンよりはるかに豊かな国なのに、どうしてこんなに貧しい人たちがいるのか」と驚いたとか。近所の川の橋の下にはホームレスの人たちがいたのです。クレイシさんは学生時代からその人たちにも食べ物を差し入れていたとか。

 しかし、当初はその活動は中々近隣の日本人たちには受け入れられなかったようです。「どうしてあんな人たちを助けるのか」と。その後、礼拝の場を作るため、クレイシさんたちは空き家になっていた小さなビルを手に入れ、2000年にマスジド(モスク)大塚を作りました。しかしそれさえ大きな抵抗があったとか。その極めつけがあのNY世界貿易センタービルへのテロ攻撃でした。しかし、近隣の人たちの認識を一変させたのが、東日本大震災の被災者に対するクレイシさんたちの援助活動でした。クレイシさんは東日本大震災の被災者救援に赴むこうとしたとき、警察や近所の人たちから好意ある反対の言葉を投げかけられたと言います。「あなたの身が危ない高速も止まっているし、いつ余震や津波があるかもしれない」と。奥さんからも「止めて欲しい」。クレイシさんも迷いました。そこでクルアーンを開いてみました。すると「アッラーのためにジハードしなさい。かれはあなた方を選ばれた」の一節が目に飛び込んできたのです。クレイシさんらは被災地へ行きました。そしてマスジド大塚の近所の人たちはもちろん、キリスト教団から仏教寺院まで賛同を得て、現地で一日8000食のおにぎりを提供したのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です