欧米に寝たきりはない

安楽死?嘱託殺人?(4)

 この驚くべき報告(中央公論社刊)は、宮本顕二医師(北海道中央労災病院院長)・礼子医師(認知症)によってなされました。なぜ欧米には寝たきり老人がいないのか。その理由は、高齢者が終末期を迎えると食べられなくなるのは当然で、経管栄養や点滴などの人工栄養で延命を図ることは非倫理的であると、国民みんなが認識しているからだと言います。そして多くの患者は、寝たきりになる前に亡くなるのです。欧米ではほとんどの高齢者は自立している。歩けなくても、心が子供や病院に頼ることがないという意味です。ヘルパーやドクターの訪問が充実しており、問題がない限り自宅でテレビを見て、または外の景色を見て過ごす。家族は土曜日に兄弟が交代で、親をパブに連れ出す。「一人でいられる」というのが彼らの誇りなのです。イギリスやオランダやスエーデンでも同様です。その理由は、何と言っても長く培われた個人尊重の精神でしょう。機械の助けまで借りてどうして個人と言えるか?でしょう。意識がないことは、たとえ息をしていても死である。当然、胃ろうや中心静脈栄養と等の行為は再生を妨げるため、悪である・・・。つまり「誇りを捨ててまでして、1年や2年延命しても意味がない」と多くの人が考えているのでしょう。日本人と人生の価値観が違うのです。

 いかがでしょうか。この人間としての誇りこそ、以前ご紹介した小島ミーナさんや、「嘱託殺人事件」の林優里さんが必死なって守ったことなのです。「おむつなどされたくない」、「人工呼吸器など着ければ言葉が話せない。言葉も話せなくては生きる意味がない」、「自分で死を選ぶことさえできない」・・・つまり「人間としての誇りは捨てたくない」。じつは林さんは本来の主治医になんども「人工呼吸器を外してください」と頼んでいたのですが断られました。そこでSNSで未知の医師に頼んだのです。

安楽死を容認している国々

スイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、アメリカ(カリフォルニア州など6州)、カナダ、オーストラリア(ビクトリア州)、大韓民国

安楽死に関する日本の判例
(1962年(昭和37年)の名古屋高等裁判所の判例では、以下の6つの条件(違法性阻却条件)を満たさない場合は、違法行為となると認定している。

  1. 回復の見込みがない病気の終末期で死期の直前である。
  2. 患者の心身に著しい苦痛・耐えがたい苦痛がある。
  3. 患者の心身の苦痛からの解放が目的である。
  4. 患者の意識が明瞭・意思表示能力があり、自発的意思で安楽死を要求している。
  5. 医師が行う。

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