立花隆さん「宇宙からの帰還」

神に出会った宇宙飛行士

 アメリカの宇宙飛行士の何人かが、月へ行って帰ってくるまでに神秘体験をした言っています。中にはその後伝道者になった人もいるのです。立花隆さんはその体験に強い興味を持ち、アメリカまで出かけて行って精力的に取材しています。それをまとめたものが「宇宙からの帰還」中公文庫。その内1つをご紹介します。

 ジム・アーウイン(アポロ15号):宇宙に出てから頭の働きがものすごくよくなったように感じる。100%の酸素を吸い続けたために、脳細胞が平常の状態より活性化したためか。何を考えてもすぐにピンとくる。透視能力とは、こういう状態を指すのではないか。・・・・・・はるかかなたに地球がポツンと生きている。他にはどこにも生命がない。自分の生命と地球の生命が細い一本の糸でつながれていて、それはいつ切れてしまうかもしれない。かくも無力で弱い存在が宇宙の中で生きているということ。それが神の恩寵だということが何の説明もなしに実感できる。神の恩寵なしには我々の存在そのものがありえないということが疑問の余地なくわかるのだ。

 宇宙飛行まで、私の信仰は人なみ程度の信仰だった。人なみ程度の信仰と同時に、人なみ程度の懐疑も持っていた。神の存在そのものを疑うこともしばしばあった。しかし、宇宙から地球を見ることをとおして得られた洞察の前には、あらゆる懐疑が吹き飛んでしまった。神がそこにいますと言うことが如実にわかるのだ。そういう直感的な洞察を得た。・・・神に何かを問いかける。するとすぐ答えが返ってくる。神の姿を見たわけではない。神の声を聞いたわけではない。しかし、私のそばに生きた神がいるのがわかる・・・すぐそこに神は実際にいるはずだ。姿が見えなければおかしいと思って、何度も振り返ってみたくらいだ。その後アーウインは伝道者になった。High Flight Foundation という宗教財団を作り、説教行脚を続けている。

筆者のコメント:立花さんは、「生とはなにか」「死とはどういうことか」という、誰でもが持つ疑問を、臨死体験や宇宙飛行士の特異な体験を格好の材料として探った人です。立花さんは哲学者ですから(東大哲学科中退)、思考と取材の徹底振りは感動的です。

 すなわち、まず臨死体験について、それらの体験を決して頭から否定するのではなく、真摯に向き合いました。超常現象を頭から否定する元早稲田大学大槻教授や某俳優とかとは大きな違いです。そして立花さんは、科学として研究している人たちの成果に基づき、「臨死体験は霊的な体験ではなく、脳神経活動の一つだ」と結論付けました。一方、宇宙飛行士たちの体験についても、綿密にインタービューした結果、「彼らの中にはたしかに神と合一した人もいるようだ」と言っています。

 立花さんは、以前から「神との合一」に大きな関心を抱き、「そういう本を耽読した」と言っています。宇宙飛行中に神秘体験したエド・ミッチェルには、「神との合一は、仏教なら厳しい修行を経て悟りに至った人によって果たされる。しかし、宇宙に出ればだれでもそれを経験できる。将来あなたにもその機会があるでしょう」と言われたとか。立花さんも何とか神秘体験をしたいと思い、「臨死体験は脳の電気刺激によっても体験できる」と言うアメリカの研究者を訪れ、自ら被検者になりました。しかし、「何にも体験できなかった」と言っています。それもあって、「死後の世界があるかどうか」について、「そういう問題は卒業した」と言っています。

 筆者はこのブログシリーズでもお話してきたように、心霊体験はいやというほどしましたし、禅の学びを通してて神秘体験もしました。その点、立花さん比べとても幸せです。体験しなければ絶対にわからない、事実なのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です