無師独悟‐1,2)

 1)読者のえびすこさんから次のようなご質問がありました。

・・・・以前から気になっていましたが、管理人氏は2022年現在の肩書・および宗旨は何でしょうか?差支えがなければプロフィール欄に追記できますか・・・・・。

えびすこさんは、筆者のブログの内容に、何かこれまでの仏教研究者や宗教家とは違うものを感じたのでしょう。筆者は「ブログの内容が大切ですから、お読みください」とお答えしました。しかし、「旧統一教会問題」を知るにつけ、筆者の宗教に対する「立ち位置」をお話するのも、何かのご参考になるのではと思いました。

 筆者は現在、いかなる宗教団体にも宗派にも属していません。独力で宗教を学んでいます。宗教は一人でも学べるのです(註1)。

 宗教団体や宗派に属すれば洗脳される

1)宗教の教義はゆがめられている

 実家は代々仏教(浄土真宗)信者で、所属するお寺もお墓もあります。そしてこれまで、禅を初め、初期仏教や大乗仏教の浄土思想、唯識思想、法華思想を学んできました。それらの経験を通して筆者が学んだのは、いかなる宗教団体や特定の宗派でもそれに属すれば、多かれ少なかれ、その団体の教義に染まるということです。

 2)多額献金問題

 いま、旧統一教会問題が、日本中に衝撃を与えています。とくに法外な献金や霊感商法、2世の苦しみが問題になっていますね。じつは、旧統一教会だけでなく、創価学会や天理教などの新宗教や、その他の多くの新新宗教にも同じ体質があるのです。つまり、それらすべては結局、「お金で悩みを問題を解決する」という構造になっているのです。「救いはお金では買えません。神様はお金を必要とはされないからです」・・・。若松英輔さんの言葉です(註2)。

 つまり、いかなる宗教団体や宗派にも属すれば、多かれ少なかれ必ず洗脳されてしまうのです。洗脳されないためには独力で学ばなければならないのです。それを脱し、「本当の信仰とはなにか」を自ら体得しなければならないのです。

追加:なぜ日本人は洗脳されやすいのか

 なぜ日本人は簡単に洗脳されるのか・・・・。大きな問題ですが、答えは簡単だと思います。自分の考えを持たないからです。戦前、日本人は軍国主義こそ正しいと思ってきました。敗戦になって目が覚めると、こんどは社会主義や共産主義を信奉するようになりました。しかし、当時の「識者たち」が理想としたロシアや中国とは一体何だったか・・・・。いま私たちはその実態をいやかというほど見せつけられています。山本七平さんは「時代の空気」と呼びました。「時代の空気」とは洗脳された国民全体の感情のことです。山本さんは「時代の空気から逃れるためには水を差すことが重要だ。しかし、その水がやがて別の時代の空気になる」とも言いました。まさにわが国の軍国主義から社会主義への流れそのものですね。

註1禅にある言葉で、師匠の元につかず、独力で悟りを目指すという意味。無師自悟、無師独覚とも。

註2キリスト教でも会員になれば給料の1割を納めます。

 2)宗教離れ

 日本のもう一つの宗教問題として、「宗教離れ」が深刻です。多くの寺院の経営が危機的状況になっているのです。核家族化で子供たちが遠くに離れ、実家の墓参りでさえ年に一度、墓じまいも増える一方です。葬儀は寺院でなく、葬儀社が催行するようになりました。寺院は生き残りのために、永代供養墓を盛んに作っています。「宗旨宗派を問いません」は彼らの謳い文句で、経営上不可欠なのでしょう。苦笑を禁じえません。最近、その一つの経営が破綻し、「お墓を引き取ってください」と言われて困り果てている人たちがいると話題になりました。

 「宗教離れ」は、わが国のキリスト教でも同じです。筆者の身内には熱心な信者で、ある教団の機関誌の編集に携わっている者がいます。ときどき機関誌を送ってくれますが、内容のほとんどは、10年1日のごとく、「○○伝第×章×△△節」の引用に終始しています。

 宗教離れの問題点

 しかし、「宗教離れ」はけっして傍観していい事態ではないと思います。太平洋戦争のあと、国家神道の廃止がきっかけになり、わが国の宗教活動そのものが大きく衰退しました。宗教は人間の心の問題の解決にとって大きな力になることは言うまでもありません。しかし戦後、それに代わる人間の生きる「よすが」が無くなってしまったのです。特に若い人たちは、何を頼りに生きて行けばいいのでしょう。正しい宗教観は、人間性の涵養にとって重要です。

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