冥界からの電話 佐藤愛子さん(1-3)

その1)以前のブログで「意識はどこから来たのか」についてお話しました。結論から言いますと、筆者は「人間の意識は肉体の意識(顕在意識)と魂の意識が重ね合わさったたものだ」と考えています。今回は霊魂の存在について、佐藤愛子さんの「冥界からの電話」(新潮社)を元にお話します。ここでは、霊魂とは魂が肉体を離れたものとお考え下さい。

 亡くなった人が霊魂となってあの世で生きていることがわかったら残された家族の慰めはどんなに大きいだろうか・・・かねて筆者が考えていることです。あの東日本大震災で、たくさんの霊的体験をした人のことは、テレビでも本でもさまざまに伝えられました。有名な話に、津波で三歳の息子を亡くした若いお母さんの体験談があります(以前、このブログシリーズでも紹介しました)。・・・震災の2年後のある日、中学生の娘と主人と、震災後に生まれた次男とで食事をしていた時です。〇〇ちゃんと離れて食べるのもなんだから、私が祭壇の方を振り向いて『〇〇ちゃん、こっちで食べようね』と言った途端、〇〇ちゃんが大好きだったアンパンマンのハンドルがついたおもちゃの車が、いきなり点滅したかと思うと、ブーンと音を立てて動いたのです。『アッ〇〇ちゃんだ』と叫びました・・・そう思ったらうれしくてたまりません(「魂でもいいからそばにいて」奥野修司著新潮社)。

 佐藤愛子さんの「冥界からの電話」(新潮社)は、高林圭吾という医師が、実際に体験した霊魂との電話でのやり取りです。本の帯には、「これは本当にあった話です。無理に信じよとは言いません。信じるも信じないもあなたの自由です。「死」は「無」ではなかったのです-。ある日、死んだはずの少女から電話がかかってきた。一度ならず、何度も。そして生きていた頃と変わりない声で会話を交わす。いったいこれは何だろう・・・。死は人生の終点ではない。肉体は消滅しても魂は滅びない。死はつづく世界への段階です。まだ続きがあるのです」とあります。

 冥界電話のそもそものきっかけは、高林医師が、将来医師になることを希望する高校生たちに講演したことから始まります。講演は主催者の意図とは違ったものになってしまったため、高林医師はその後ずいぶん落ち込んでしまったとか。そこへ一人の女子高生から手紙があり「とても感激しました。もともと国文志望でしたが医学部受験にチャレンジします」とありました。手紙には住所もなく、名前もただ「ひふみ」とだけ書いてありました。しかし携帯電話番号らしきものが書いてあったので電話すると、はたして「ひふみちゃん」が出ました。手紙にあった通り、「猛勉強して医科大学を受験する」との返事でした。そして1年後彼女は見事に某公立医科大学に合格したのです。知らせの電話を受けた高林先生が「合格祝いにご馳走したい」と言うと、彼女は喜んでそれを受け、「当日友達と一緒にそのボーイフレンドの車に便乗して行く」と。・・・しかし当日彼女は来なかったのです・・・。2週間後の夜、携帯が鳴り、「突然ですが、あなたはひふみをごぞんじですか」との電話があったのです。よく聞くとそれは彼女の兄からであり、「あの日ひふみは交通事故で死にました」・・・・。

 冥界との電話はいよいよ本題に入ります。この前の電話から12日後、またひふみの兄(某医科大学の学生と名乗っていた)から電話がありました。しかし、その話し中に突然彼の声が途絶え、「先生・・・ひふみです」・・・以下の物語は佐藤さんの原著をお読み下さい。かいつまんで言いますと、彼女は自分が死んだことを自覚しており、兄に憑依して電話をかけさせ、兄が気を失っている間に自分が携帯に割り込んでいたのです。それから何か月にもわたって「ひふみさん」との電話でのやり取りを楽しんでいた高林先生はふと、「ひふみちゃんはいつまでも現界に留まっていてはいけない。幽界から霊界へと向上していかなければ」と思ったのです。責任を感じてひふみちゃんにそれを強く勧めました。

 そのころ、自分もひどい霊的体験をした佐藤愛子さんを知り、出会って彼の不思議な体験を話したのです。二人は大いに共感しました・・・

その2) 佐藤愛子さんは書いています。・・・その後5年にわたって「ひふみちゃん」からの冥界からの電話は続き、結局ひふみちゃんは高い霊界(神界?)に昇って通信は途絶えました。

 高林先生は「なぜ自分にだけこんな体験をするのか」と深く悩み、佐藤さんや有名な霊能者である中川昌蔵師や相曽誠治師などのアドバイスを受けて「自分は審神(さにわ)者(「降臨した神」が本物かどうかを確かめる特別な能力を持った人:筆者)として働け」との天の啓示でゃないか」とも考えました。しかし、その後、当時のどの新聞にもひふみちゃんの交通事故の記事などなく、兄が某医科大学の学生であることも嘘だったのです。兄はその後の電話で「あの大学とは合わなかったので退学した」と説明しましたが・・・。

 ・・・そこで、ある有名な女性霊能者に霊視してもらうと、ものすごく大きな真っ黒な狐霊が、真っ赤な大口を開けて愉快そうに笑っているのが見えたそうです。高林先生は狐霊の仕業と聞いて、憤懣の面持ちでした・・・結局、高林先生は黒い狐霊説を黙殺しました。それで筆者(佐藤さん)も黙殺しました。

 いかがでしょうか。筆者は高橋圭吾医師の本名(T先生とします)もクリニックの本当の場所も知っています。小児アレルギーの専門医であることは事実です。なぜなら、筆者はT先生と会ってお話したことがあるからです。開業される前にお会いした時にも心霊的なお話をされていました。その内容は今でもよく覚えています。T先生が心霊現象に強い興味を持つようになったのは、お父さんが長野県で御嶽教の熱心な指導者であり、神降ろしや神伝治療をしているのを幼時から目の当たりにしていたからだそうです。筆者は御嶽教についての知識はありません。たぶん山岳信仰(山伏)の一つでしょう。ただ、「神降ろしには細心の注意が必要だ」とだけ言っておきます。

 筆者は、T先生の体験については、やはり上記の女性霊能者が言っていることが正しいと思います。ご自分が「審神(さにわ)者としての天命を受けた特別な者だ」と考えるのは、むしろT先生の人間的弱点だと思うのです。そこへ狐霊に付け込まれたのではないかと気がかりです。いわゆる神界には高級神から、龍、狐狸、蛇、天狗・・・などのいわゆる自然霊まであります。よく新・新宗教の教祖が「○○神が私のところへ降りてこられた」と言いますが、その大部分はこれらの自然霊なのです。前記のように、降臨した「神」が本物かどうかを見分ける特別な能力を持つ人を審神(さにわ)者と言い、とても重要な役割ですが、T先生は「こういうことが起こるのは、自分は審神者としての天命を受けた特別な者であるからだ」とお考えになるより、先生が冥界通信した相手が何者かを審神することの方が先決と思います。大口を開けて笑っている狐霊がとても心配です。T先生、危険です。

その3) はじめに:筆者のブログシリーズでは、禅を中心にした仏教についてお話しています。それに加えて、今回のように「意識」や霊魂についても話題にしています。それらを抜きにして禅は理解できないと思うからです。

 前回ご紹介した「冥界からの電話」では狐霊や蛇霊などを神と思い込むことは危険だとお話しました。普通これらを自然霊と言います。自然霊にとっては「冥界からの電話」など造作もないことです。こちらが強い関心を持てば・・・。筆者の知人には、近所の祠の熱心な信者がいます。なんでもご霊験があらたかなのだとか。筆者も見てきましたが、たくさんの幟が奉納され、知人の名前もいくつかありました。しかし、それらを単純に神だと信じるのはとても危険なことなのです。自然霊が「神」と称して「降臨」し、予知や霊界通信や、一定の「ご利益」を現わすのも難しいことではありません。そういった類のものを頭から否定することもまた、正しくありません。ただ、そういった世界にどっぷり漬かることが危険なのです。俳優の丹波哲郎さんは、よく「あの世」のことを書いていましたね。それなりに功績はありましたが、抜け出せませんでした。また、稲川淳二さんのように「ほんとうにあった怖い話」をし続けることも正しくないと思うのです。そういうことばかり考えていると、そういう世界と「波長」が合ってしまうのです。稲川さんも子月が変わりましたね。「冥界からの電話」の当事者T先生はとても良い方で、誠実な医者です。しかしお父様以来の山伏信仰に「はまって」いたのだと思うのです。そういう「異界」は、「あると認めて」早く卒業しなければいけません。

 こういう問題は、昔からあります。ことに神道の世界では、前にお話した「審神(さにわ)」がとても大切なこととされてきました。「今降りている霊的存在の正体を見極めること」です。「触らぬ神に祟りなし」と言いますね。ふつう「あいつはちょっと癖があるから下手に関わるのはやめておこう」と言う意味で使われています。しかし、本来の意味は、「素性のはっきりしない『神』には近づかない」です。下手に近づけば、負の「ご利益」があるのです。

 よく旅行に行ったついでに有名な神社や寺院を訪れ、いろいろな願い事をする人がありますね。それもよくないことがあるのです。せいぜい、「近所まで来ましたのでご挨拶申し上げます」が正しいのです。筆者は、近所の神社の役員をさせていただいていますが、神様に願い事はしません(若いときはよくそうしましたが)。神仏は感謝だけをするものです。もうすでに十分神の恩寵を受けているのが人間なのです。

 また、よく日本の新宗教、新々宗教が、法外なお布施を要求しますね。もうそれだけでその宗教はインチキだとお考え下さい。

 筆者はかねがね、いつかはこのことをブログ上でお話したいと考えていました。今回ちょうどよいきっかけが得られましたのでご紹介しました。

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