曽野綾子さんと海外邦人宣教者活動援助後援会
第四回読売国際協力賞(1997年度)の選考理由は、
・・・国際協力活動で顕著な業績のある個人・団体を表彰する読売国際協力賞の第四回受賞者は、開発途上国などの貧困救援活動を展開してきた海外邦人宣教者活動援助後援会(JOMAS:Japan Overseas Missionary Activity Sponsorship、本部・東京都大田区、曽野綾子代表、支援者約1600人)に決定しました。正賞と副賞500万円を贈ります。
JOMASは、作家の曽野綾子氏を中心に、72 年に活動を開始したNGO(民間活動団体)で、日本全国から寄せられた寄付金をもとに、アジア、アフリカ、南米諸国に定住するカトリック神父や修道女を介して辺境地域へ物資や資金を提供し、現地の教育、医療、生活環境の改善に大きく貢献してきました。これまでの事業総額は4億円を突破しています。
選考委員会では、25 年にわたるJOMASの活動実績をはじめ、〈1〉会の運営費はすべて自費で賄い寄付金全額を事業に投ずる〈2〉現地調査で寄付金の使途を監査する〈3〉寄付金は布教目的に使わない――などの活動姿勢を高く評価しました・・・。
曽野さんの著書「神さま、それをお望みですか」(文芸春秋)によると、海外邦人宣教者とは、海外で働く日本人神父と修道女たちを指し、彼らの活動を助けるための資金と物資(住居、薬品、食料、衣料、教育など)の援助を目的としています。同書の中でまた、「対象者を日本人神父と修道女に限り、現地での任務の終了まで」と限ったのは、この種の国際慈善事業は、往々にして現地の仲介者(政治家や聖職者を含む)による横流しや、善意のだらしなさがあるためだとのことです。日本人神父や修道女なら、現地調査で寄付金の使途を監査することができるからでしょう。さらに、「会の運営費はすべて自費で賄い」がまことに尊いですね。世に国際慈善事業はたくさんありますが、この一項を順守している団体は他にはないはずです。曽野さんを含めて6人の女性と公認会計士の男性(いずれも発足当時)はもちろん無給で、必要に応じた海外渡航費は自費です。なにしろ、支援者への連絡用ハガキは「各方面から送られてきたアンケート用ハガキにいくらか足して郵便局で正規のハガキに変えてもらったもの」という徹底ぶりです。3)の「寄付金は布教目的に使わない」は、カソリック信者でない人からの寄付もあるからという理由から。
以前、ある国際援助団体の日本支部の幹部がファーストクラスの飛行機で移動したる不明朗な点を指摘した人が、同団体に訴えられ、敗訴したこともあります。それに比べて曽野さんの団体のなんと単純明快、爽やかさでしょう。
曽野さんは1931年生まれ、幼稚園から大学まで一貫して聖心女子学院で学んだ人で、生え抜きのクリスチャンでしょう(自身は「私は信仰が深くないから」と言っています。たしかに曽野さんと同じ高校・大学で学び、「強い影響を受けた」シスター鈴木秀子さん(元聖心女子大学教授)は、生涯独身を保っていらっしゃいますから、「鈴木さんに比べれば」でしょう。なお鈴木秀子さんの尊い活動については以前お話しました)。もちろんカソリックの神父や修道女は、生涯独身を誓わなければ就任できません。もし神父が女性との間が子供を持つような関係になったら、教会は、その子供の幸福を優先するから、神父には教会で働く職を解き、結婚生活に入れるとか。ホッとしますね。
いかがでしょうか。曽野さんや鈴木さんを含め、神父や修道女たちカソリックの人々の信仰の強さは、神に対する絶対的な信頼でしょう。曽野さんが紹介している、アウシュビッツで身代わり死を申し出たマキシミリアノ・M・コルベ神父の場合や、北アフリカで宣教を志願した神父や修道女たちが、次々に伝染病や虐殺で死んでいったため、請願書に「殉教を志願して」というラテン語の一項を設けたところ、かえって志願者が増した例など、聞けば気が遠くなります。